キャリーオフ!

 

 

 


早く王子様が私を迎えにこないかなー。



なんて、ロマンチックでくさいセリフをつぶやいた。
そしたらシリウスに、頭平気か?などと最悪な返事を返された。(ちくしょー)(夢見させてくれよ!)






シリウスは、本を片手にそう言った。のぞき込むように私の顔を見て。
その時の目といったら、本気で心配しているのか、バカにしているのか、よく分からないものだった。
本を持っていない方の手を、私のおでこに当てた。優しく、ではない。(べたって!べんって音がしたよ!)


「よし。熱はないな(安心)」
「なんだねそれは。失礼極まりないぞ!(きー!)」
がおかしい事言い出すからだろ(ふー)(呆れ)」
「おかしくなんかありませーん。私は至って正常の健康な乙女です!(いばり!)」
「ぶっ!どこに乙女がいるんだっつの!」
「(!)なんだとこらー!」



ぎゃははは、とシリウスは大声で笑い転げる。
あんまり激しく笑うもんだから、座っているソファがぎし、ぎし、と悲鳴をあげていた。
埃っぽい表紙の古そうな本がばたっと絨毯の上に落ちた。
それでもシリウスはそんなことは気にもとめない。いまだに笑いが止まらないようだ。(笑いすぎだっつの!)
私にはこいつの笑いのツボが分からないよ。まったく!(まだ笑うか!)



むかついたから、笑いころげているシリウスの頭を、ばしっと音がするくらいはたいてやった。(ざまみろ)



「いてっ!いてーよ!」
「当たり前よ。痛くはたいたんだもん(べーっだ)」
「何もはたくこたねーだろ!」
「失礼極まりないシリウスくんに、正義の鉄拳です(ふん!)」
「・・・・・・・・暴力女」




一発はたいてすっきりしたけれど、最後にシリウスが言った言葉がまた頭に来て、
今度はクッションを顔めがけておもいっきり投げてやった。(顔面にクリーンヒット!)(やったね!)


でも、喜んでいるところを、リターンで顔にクッションを当てられた。
もちろんクッションはやわらかかったけど、相手の力が強かったのもあって、結構痛かった。(くそ)
ぼふっというにぶい音がした。(ぶふって変な声をだしてしまった)(恥ずかしい!)


「いたいー!乙女の顔を狙うなんて最悪だー!」
「あーはいはい。すんませんねー」

 


口ではそう言ったけど、ふと見上げたシリウスのは顔はにやついていた。
今度くっくっと喉を鳴らして、さっきとはうって変わって静かに笑う。その微妙な表情が私を惑わすんだ。


「つーかお前、鼻の頭赤いし!ぎゃはは!」
「お前のせいだー!ばかシリウス!」
「ぎゃはは!(笑い止まんねー)」
「もう嫁に行けないじゃんかー!(わーん)」
「(ひー、腹いてー)そうなのか?」
「そうだよー!責任とれこんにゃろー!」
「(口悪いなこいつ)分かったよ」



突然笑うのをやめてシリウスがまじめな声でそう言った。
びっくりして、彼の顔をまじまじを見てしまう。
なんだ突然。責任とってくれるってことか?・・・・マジで?



「鼻の頭赤くしてるまぬけを迎えに来てやれるのは俺ぐらいだろ」



口の端を歪めた、シリウスが一瞬だけおとぎ話にでてくる王子様のようにかっこよく見えた。
別に格好がどうこうというのじゃなくて、シチュエーションがそうなっただけ。



お話の王子様はもちろんシリウスで、さしずめ私はお姫様ってところか。(柄じゃないけど)
口の悪い王子様は、お世辞ににもロマンチックとは言えないセリフをはいて、私の心をかっさらっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ロマンチックな展開なんてなくたって別に私は幸せになれる