親友や、その他の女の子達の黄色い声援が聞こえる場所を、私は一刻も早く離れたいとそう願った。
いや、これは本気で。かわいらしいはずの声も今の私には、うざいとしか思えない。
性格の悪い女だと言われても、今はそうとしか思えないのだから仕方ない。


 

 

 

 



「ジェームズー!素敵よー!」



 

 



ほら、隣で親友のリリーが恋人のジェームズに向かって声援をなげかけた。
かわいらしい声をめいっぱい張り上げて。なんとも健気ではないか。
ジェームズが惚れるのも頷ける。どうせなら私が恋人に欲しいくらいだ。嫁でもいい。
ついでにいうと、その可憐さの一欠片でもいいから私にくれたらいいなーと思う。(切実に!)


 

 



!」

 

 

 


リリーに大きな声で呼びかけられて、私は、はっと我に返った。
ありえないくらい、ぼーっとしていたようだ。はるか遠くの空のどこかに焦点があっていた。
リリーが大声を出すまで私は彼女の呼びかけに気がつかなかった。

 

 



「何?リリー」
「何、じゃないわよ!ジェームズがスニッチをとったわ!」

 

 

 




グリフィンドールの劇的な勝利が決まったようだ。
いつも通り、ジェームズ・ポッター、彼が見事にスニッチをキャッチしたおかげだ。
こりゃー、今夜は宴会だね。なぜか、グリフィンドールにはお祭り好きが集まっているようだ。
私も、その一人に漏れず含まれているのだが。
彼もお祭り好きの中心人物の一人に当てはまっている。


 

 

 



「リリー!!」

 

 

 

 


うれしそうに、人なつこい、親しみやすい笑みを浮かべながらリリーと、ついでで私に呼びかける。
私は、やっぱり二番目で友達止まりかよ。ちくしょう。

 

 


どうすれば、私は君の一番になれる?分からない。
一番嫌いな占い学のレポートよりも分からない。
だから、とっととその方法を教えて。
自分で探しても見つからないって、分かってるんだ。
君に聞いてもきっと結果は変わらないって、分かってるんだ。
それなのに、未練がましい奴だって?悪いね。こんな性分なんだ。
きっとこの性格は変えられないよ。それこそ、神様が出てきて私を生まれ変わらせるか、一度死ななきゃね。

 

 



ジェームズは、私たちに大きく手を振りながら、ゆっくりと地上に降り立った。
まわりの観客達が歓喜と声を上げ、その歓喜は、次々に伝わって、ループする。

 

 

 


中には、汚い言葉でグリフィンドールの選手をなじる、相手チームの嫌な奴らもいたけれど、
小さな嫌みやなじりは、大きな歓喜の渦に勝てずに飲み込まれ、いつしか消えてなくなった。
ざまぁみろ。と私はなにもしてないけれど、嫌みを言った奴らが小さくなって消えていくのを見て、そう思った。

 



すると、チームメイトたちやシリウスやリーマスたちが一斉にジェームズを取り囲み、歓喜の声を上げた。
私は、その輪の中に混じれず、観客席からその様子をじっと見ているだけだった。

 

 



私は、じっと観客席に座って、ジェームズたちの喜び合う光景を眺めていた。
相手チームのメンバーは悔しそうに競技場を出ていったが、彼らは、そんなことはおかまいなしという風な様子だった。

 

 



ふと、ジェームズがこちらに顔を向けた。
そして、にかっと笑った。
リリーが私の隣にいたせいかもしれないが、私の居る方向に向かって。
私に向かっての笑顔じゃないと思う。
恋人のリリーに向けたものだと思う。そう考えるのが普通だからだ。

 

 

 



だけど、ジェームズの笑顔を見れただけで、こんなにも胸が高鳴る私は何だ。
リリーから彼を盗ろうだなんて思ってもない。
むしろ、二人はお似合いだと思っているくらいだ。
なのに、まだ未練があるのだ。親友の彼女にも言えない思いを秘めている。

 

 


そんな私は卑怯者とでもいうべき存在だ。

 

 




卑怯者になっても、私は、このとき、ジェームズの笑顔を見れただけで幸せだった。
胸がいっぱいになったのだ。

 

 

 




奈落の底に落とされてもいい。別にどうなったっていいから。
もう少し、彼と一緒に過ごせる時間が欲しい。と思った。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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こんなことを考える私は卑怯ですか